1月句会結果発表
兼題の部(寒月)
作 品 互選 選者選 都道府県 作者
28寒月や碑のみの古戦場12大阪府藤井あつこ
27寒月やまなこの光る鬼瓦11東京都水谷博吉
5古九谷の金継ぎ細し寒の月10石川県翡翠工房
58寒月や隣が遠い回覧板7北海道篤 道
65寒月や深き眠りの弥勒仏7奈良県魚楽子
17詫び状をポストに落とす寒月下6静岡県えいちゃん
41寒月や意志あるごとく石一つ5愛知県牧 子
25寒月や一人占めする歩道橋5東京都小石日和
26茶屋街の格子を照らす寒の月4神奈川県ひろし
36賀茂鶴の煉瓦煙突寒の月4神奈川県ドラゴン
7寒月や産土を去り半世紀4大阪府順 紀
19寒月やひとかたまりの黒き森4千葉県こごめ草
21寒月や剥き出しとなる仕掛け罠4大分県牧野桂一
74寒月の晒す病棟非常口4神奈川県りゅう
34煌煌と空に寒月貼り付けり3滋賀県幸 亀
35寒月やウクライナガザベネズエラ3茨城県申 女
39寒月やもの言ひたげな欅こぶ3神奈川県横坂 泰
54チャルメラの音が似あいし寒の月3静岡県かいこ
64東雲の切っ先しるき寒の月3千葉県須藤カズ子
12寒月下ピアノ置かるる闇の部屋2静岡県指田悠志
20寒月や白川郷の薄明かり2愛知県コタロー
23寒月や気泡ののこる窓硝子2兵庫県毬 藻
29陸奥の寒月白く時を止め2埼玉県夜 舟
38父祖の村沈むダム湖に寒の月2大分県輝 久
42我を呼ぶ母の鈴の音寒の月2岡山県原 洋一
51山道の走り根照らす寒の月2神奈川県阿部文彦
52寒月や無住家屋の増へし村2愛知県み う
57寒月や水盃を割って発つ2兵庫県紀州鰹節
60山小屋にほのかな灯り寒の月2神奈川県梗 舟
61ただ祈るほかなきことよ寒の月2愛媛県牛太郎
76寒月や木立の中に星一つ2茨城県西川富美子
81寒月や孤高の路上生活者2鹿児島県青 猫
82耳遠き客見送りて寒満月2大阪府日野かぐや
83寒月の鶴眠る川蛇行かな2北海道小 幸
1寒月やあまねく空地空家にも1千葉県えだまめ
8寒月や水銀灯が針を刺す1大阪府森 佳月
11寒月や夜の工場めくサキソフォン1神奈川県遠野アルヒ
13寒月や理由なく起こる胸さわぎ1滋賀県百合乃
15寒月の照りのしづけき龍安寺1岐阜県近藤周三
16寒月が南中銀座四丁目1新潟県しーしー
22寒月や納骨終えし墓石にも1埼玉県桜 子
24寒月にまみれ肩組む道祖神1京都府せいち
33寒月にキタキツネ跳び跳ねるかな1兵庫県藤島三郎
37寒月や職辞する日も近かからん1愛媛県海 猫
43突き刺さる彼のひと言寒の月1三重県déraciné
44寒月や朱塗りの橋のくつきりと1埼玉県イレーネ
45寒月や京の町家の仄明り1神奈川県風神ひろし
53寒月の石磴駆くる僧衣かな1神奈川県藤澤迪夫(みちを)
56寒月や攫はれさうになる「ゆ」の字1大阪府椋本望生
63寒月に原爆ドーム照らされて1千葉県美 保
69寒月光入江の波は満満と1大阪府奥村かよん
72寒月やLEDの白々と1神奈川県とん子
自由題の部
作 品 互選 選者選 都道府県 作者
110一畝の土寄せ終えて根深汁12東京都水谷博吉
170組紐のかたき結び目寒椿11石川県翡翠工房
207見舞ふたび遠くなる母星冴ゆる10岡山県原 洋一
134千年を孕み大樹の初御空9愛知県み う
130寒紅をさし越前の和紙を漉く9千葉県光雲2
192赴任地の小さき駅舎寒椿8東京都水谷博吉
216七草のそろはぬ粥を老二人8愛知県み う
225平穏とひと言記す初日記8愛媛県牛太郎
185身体の閂外し日向ぼこ7愛知県コタロー
124買初のこの靴余生しかと踏む7愛知県牧 子
132駄菓子屋の路地に喚声あばれ独楽7神奈川県みぃすてぃ
164冴ゆる夜やページ余白に妣の歌6大阪府日野かぐや
106鳴かぬ鳴き砂大寒の足の裏6兵庫県毬 藻
194双六の上りの先の深き闇6埼玉県夜 舟
188花街の朝の静けさ寒雀5兵庫県毬 藻
102彼の持つ本を予約す春隣5千葉県こごめ草
129蕗味噌や橋の袂の縄のれん5栃木県垣内孝雄
157相州の連山染むる寒夕焼5神奈川県秋山由美子
213雛菊や騎手を目指すと言う少女5兵庫県ケイト
234息吸つて吐くごと餅の焼けにけり5東京都浩 平
224客ひとり終着駅の虎落笛4神奈川県梗 舟
107バスを降りニ尺雪積む山道へ4京都府せいち
111散歩して授かる一句春近し4大阪府藤井あつこ
123妻なれど言葉あらたむ初明り4神奈川県毬 栗
190八十路にてボーイフレンド梅の花4東京都小石日和
214寒紅や迷ふこころのままに引き4神奈川県みぃすてぃ
217左義長の祈り紅蓮のほむらかな4神奈川県藤澤迪夫(みちを)
241雪合戦ひたすら投ぐることが好き4静岡県渡邉春生
93目覚めれば霜一面の田んぼかな3宮崎県黒木寛史
112春近し歯医者ごときにビビるなよ3埼玉県夜 舟
119ハンバーガーショップ混合ふ三日かな3神奈川県ドラゴン
122湯豆腐の二人に戻る普段かな3神奈川県横坂 泰
142掌につかの間の花牡丹雪3神奈川県梗 舟
148夢射んと挑む初射の二十歳かな3滋賀県鶴亀鈍
177元旦のこきつと音のする背中3静岡県指田悠志
197着ぶくれて靴の定位置遠くなる3神奈川県ゆりみ
229水脈曳いて鴨の一群飛び立ちぬ3奈良県魚楽子
233福島の能登の神戸の去年今年3大阪府奥村かよん
239玉砂利を踏みて拝殿淑気かな3神奈川県秋山由美子
85冴ゆる夜や「大丈夫」しか言わぬ吾子2兵庫県丸井ねこ
90温泉の長い廊下の湯ざめかな2大阪府順 紀
95珈琲のほどよき淑気夜が明くる2静岡県指田悠志
101教会に光り射し込む寒落暉2静岡県彗 星
103色鳥の色を零する水面かな2愛知県コタロー
118初春や弁天様に銭洗ふ2茨城県申 女
120七日粥すする一人の音寒く2愛媛県海 猫
127字の読めぬ童と遊ぶ歌留多の夜2埼玉県イレーネ
128花びらの紅を零すや雪の庭2神奈川県風神ひろし
137人妻となりたる妹と年の酒2広島県山野啓子
139八潮なほ陥没のまま鐘冴ゆる2兵庫県紀州鰹節
143玉砂利の響く参道初詣2愛媛県牛太郎
145寒風に白髪忘れて球を追う2千葉県美 保
149粋すぢも華添へ鏡開きかな2岐阜県俳ネン
151初春や指揮棒振れば新世界2大阪府奥村かよん
162住まぬ家の庭賑わせる紅白梅2静岡県なな子
181雪しまき尾灯の続く出勤路2新潟県しーしー
208寒紅や玉虫色の恋心2三重県déraciné
220ひととせの一日の早さ去年今年2大阪府椋本望生
235煮凝りの茶色の沼に箸を入れ2愛知県いきか
243水仙の何か言いたげおちょぼ口2神奈川県佐藤けい
87人日や剃刀を研ぎ髭を剃り1神奈川県たかほ
88何もかも言えず鯛焼きおちょぼ口1石川県翡翠工房
89新春や山も川面も清々し1京都府花 子
94葉は銀の葉脈残し冬深む1神奈川県遠野アルヒ
96淑気満つオーガニックの珈琲かな1滋賀県百合乃
104綾取りの指の先より川流れ1大分県牧野桂一
105その一言悴む心ゆるみゆく1埼玉県桜 子
113不在票溜まるポストと冬の薔薇1秋田県不知飛鳥
115いい湯だな指1本で雪化粧1神奈川県ゆりみ
117大枯野地に新しき騒きあり1滋賀県幸 亀
125支へ合ふ余生の活計納豆汁1岡山県原 洋一
138描き起こす語り部まんが阪神忌1大阪府椋本望生
144路地角に四時開店の焼き鳥屋1神奈川県ひろ志
147積読を己に許し春を待つ1奈良県魚楽子
150凩にキャラメルの紙立ちあがる1大分県晴田そわか
154凍蝶のトボトボ歩く鉢の縁1神奈川県とん子
155楓花舞う君の後れ毛花飾り1兵庫県三木信雄
156落暉へと消えゆく橇や明日は晴1神奈川県りゅう
158初場所や蒼き瞳が場所沸かす1茨城県西川富美子
161日脚伸ぶスーパー帰りの立ち話1神奈川県佐藤けい
163白梅や咲き始め知る夜の城1鹿児島県青 猫
165朝焼けへ鶴はねぐらをの飛び立ちぬ1北海道小 幸
167引退のエースの笑顔冬の薔薇1兵庫県丸井ねこ
168初春や朝日輝く箱根走1北海道北美膝痛
171用足しに起きる夜半の寒さかな1京都府花 子
172一賀状墨痕鮮やか午一字1大阪府順 紀
175百姓の誇りはなんぞ宝船1宮崎県黒木寛史
176初夢や一度住みたし銀座裏1神奈川県遠野アルヒ
178冬日和カタカタ絵馬のアレグレット1滋賀県百合乃
183手触りのけもののごとき毛布かな1静岡県彗 星
186金柑を煮詰め年金受給の日1大分県牧野桂一
187しつけ糸抜きし春着や二十歳1埼玉県桜 子
189生玉子生麦生米寒玉子1京都府せいち
193姉川の果や伊吹山の雪化粧1大阪府藤井あつこ
195飛行機の窓薄く開け初日の出1秋田県不知飛鳥
196満天の星と語らふ大寒や1千葉県山 月
204日向ぼこ年金たんとあるがごと1神奈川県横坂 泰
205洟垂れのあいさつ光る蕗の薹1神奈川県毬 栗
206張りつめし青空ゆるぶ梅の花1愛知県牧 子
209冬ぬくし背伸びを二回あくび二度1埼玉県イレーネ
212水仙や花首傾げ香を零す1千葉県光雲2
221入院の背中(せな)を追ひけり春の雹1兵庫県紀州鰹節
226黒々と畑を返して春を待つ1神奈川県ひろ志
228神宮の杜忘れられたる落ち葉籠1千葉県須藤カズ子
231見るほどに老いて父似の初鏡1岐阜県俳ネン
236女正月友の一人は仕切り屋さん1神奈川県とん子
238耳奥に沈沈と降る夜の雪1神奈川県りゅう
240元旦の余韻残して父は逝く1茨城県西川富美子
246多捨の果て一句成したり冬椿1大阪府日野かぐや
一月句会 選評 選者:草の花俳句会 同人会 服部 満

≪兼題の部:寒月≫

★寒月やまなこの光る鬼瓦

 屋根にしつらえた鬼瓦の鬼の顔、その鬼の眼が月光に光っている。新しい鬼瓦かも知れない。寒月は、空気が
透徹しているので、研ぎ澄ましたような輝きとすさまじさがあります。「まなこの光る」で、鬼瓦の鬼をまるで
生き物のように把握したところが印象的です。「寒月」ならではの肌を刺す緊張感を感じます。

◎詫び状をポストに落とす寒月下

 詫びねばならぬどんな事情があるのかは分からない。謝罪とともにいささかの後悔もあるかも知れません。身
を切るような冷え冷えとした月光の下、詫び状を投函する作者の心中が「寒月下」の言葉の裏にうかがえます。
「ポストに落とす」という表現も、この心理を巧みに表わしています。

◎寒月や碑のみの古戦場

 戦国時代の合戦場でしょうか。誰もが知る史跡ではなく、今では開けて近くまで住居が迫っているのかも知れ
ません。冷厳で氷ついたような寒月の下、石碑だけが寂しくぽつんと立っています。その昔、戦に倒れた兵士た
ちを悼むかのようです。皓皓と輝く冬の月が美しく冴え冴えとした大気を感じさせる景です。

≪自由題の部≫ 
                       
★見舞ふたび遠くなる母星冴ゆる

 「遠くなる母」が胸に沁みます。病院か施設を見舞う作者。徐々に病状が悪化しているのか、あるいは認知機
能が衰えてきているのか。母と親しく意思を通わせにくくなっているのでしょう。刺すような冬の夜空に星がき
らめく。「星冴ゆる」が震えるような作者の気持ちを見事に表しています。

◎身体の閂外し日向ぼこ

 日当たりの良い縁側やベランダ、公園のベンチなどの景でしょう。腰や膝、肩など持病や老化で日頃気遣い、
注意している部位も忘れてすっかりくつろいでいるのかも知れません。「身体の閂」の表現も面白いですが、閂
を外していちばんリラックスさせているのは案外、体ではなく作者の心かも知れません。

◎赴任地の小さき駅舎寒椿

 新しい赴任の地のホームに降り立ったら、そこは小さな駅舎だった。ここから町の規模とか地域の環境も推し
測れる。勤め人にはよくある経験です。「寒椿」は、寒中にも咲く早咲きのもの、鮮やかな紅か純白か、寒気の
漂う駅舎の一隅に切り花として据えられています。くっきりとした景が浮かぶ映像のような句です。

        
戻る