4月句会結果発表
兼題の部(長閑)
作 品 互選 選者選 都道府県 作者
55のどけしや赤子指より眠りだす18岡山県原 洋一
19大阿蘇の牛の反芻長閑なり16神奈川県ひろし
28百年の振子のひびき長閑なり6兵庫県毬 藻
24長閑さや何もせぬ日の暮れてゆき5茨城県申 女
9長閑なり空よりふつてくる欠伸5静岡県指田悠志
40長閑さや亀の親子の甲羅干し5千葉県光雲2
23のどけしや三時を告げる鳩時計4埼玉県桜 子
25長閑さや犬の呼吸の静かなる4愛知県コタロー
42のどかさや雲へ寝ころぶ草の上4愛知県牧 子
51長閑しや後ろに母が居るような4北海道篤 道
54太公望うつらうつらと湖長閑4滋賀県鶴亀鈍
61長閑さや戸口に護符の角大師3東京都浩 平
69のどけしや岬が空へ浮くやうな3神奈川県りゅう
12長閑や逆しまに干す旅鞄3神奈川県たかほ
2いましばし生きていたしや海長閑3愛知県佐藤マルキチ
10長閑さや三和土の広き郷の家3千葉県小澤富子
14雲のどか机上に市制百年誌3神奈川県遠野アルヒ
20長閑さや猫の会議は二時間目3石川県翡翠工房
47のどけしやリサイクル店の猫番頭3兵庫県ケイト
60長閑さや夫の気配を遠く置き3奈良県魚楽子
73長閑なり世界鉄道地図作る3鹿児島県青 猫
3寝たきりの妻の寝顔も長閑なり2大阪府森 佳月
4クレヨンの空は水色長閑なり2大分県牧野桂一
13渾名で呼びあだなでよばれ旅のどか2岐阜県近藤周三
17長閑なりかすかに遠くチャイムの音2埼玉県イレーネ
32のどけしや民謡流し屋形船2滋賀県幸 亀
33のどけしや山羊は水路をひょいと越へ2愛知県み う
43のどけしや我楽多市のめっけもん2三重県déraciné
1のどけしやうつらうつらと舟をこぐ1千葉県えだまめ
7長閑しや睡魔を誘ふ籐の椅子1宮崎県黒木寛史
8長閑なる野辺に隠るる祠かな1神奈川県みぃすてぃ
11長閑なり村の鎮守の花吹雪1大阪府順 紀
15のどかさや自転車押して遊歩道1兵庫県三 郎
16のどかさや溢れ種よリ花の咲き1滋賀県百合乃
18のどけしやバスの正面のろのろ来1広島県山野啓子
22長閑さに昔のくらし探しをり1静岡県えいちゃん
26駘蕩や全員ヤギの除草隊1東京都小石日和
29のどかなる遺影の夫の笑顔かな1愛媛県海 猫
37のどけしや認知の人の二度三度1神奈川県横坂 泰
41のどけしや漫画片手にちやんこ鍋1神奈川県毬 栗
48沖をゆくフエリーボートや海のどか1岐阜県俳ネン
50長閑なる住職ひとり庭掃けり1神奈川県阿部文彦
53長閑なり庭の草にも名前あり1茨城県西川富美子
62名花あり荒草もあり長閑かな1千葉県文 武
64長閑さに菓子屋の主釣に出づ1大阪府奥村かよん
66鴨川のせせらぎ長閑ツーショット1神奈川県梗 舟
67長閑なる軍港のボラードに猫1大分県晴田そわか
71のどけしや峠の茶屋の緋毛氈1神奈川県秋山由美子
72水路には小魚誕生して長閑1愛知県いきか
自由題の部
作 品 互選 選者選 都道府県 作者
114篝火の中に修羅舞ふ薪能9千葉県光雲2
168一枚の青き空縫ふ初燕9石川県翡翠工房
87母の帯売りたる悔いや啄木忌8岐阜県近藤周三
219散り際は風にまかせて雪柳7神奈川県秋山由美子
124走り根や古道は暗し夏落葉7神奈川県阿部文彦
86地下街の暗き静寂昭和の日6神奈川県たかほ
171つばめ来る白鷺城を斜め切り6埼玉県桜 子
173満開の花の下へと車椅子6愛知県コタロー
218倒木の倒れしままに芽吹きけり6静岡県渡邉春生
196むらさきの雫したたる藤の雨5岐阜県俳ネン
180春深し阿弥陀如来の堂の黙5滋賀県幸 亀
93少年のスケボー宙へ陽炎へり5神奈川県ひろし
98春雷や夫の手術を待つ廊下5茨城県申 女
100花御堂まこと小さきお釈迦様5東京都小石日和
116振り向かず出ていく吾子や春の風5愛知県牧 子
122宣伝のビラが空から昭和の日5岐阜県俳ネン
142能登二とせ焼け跡柿の新芽かな5大阪府日野かぐや
184風光る津軽訛りのバスガイド5神奈川県ドラゴン
89奴凧胸をそらして睨みをり4兵庫県三 郎
130和太鼓の響く湯の町春うらら4愛媛県牛太郎
76御所の灯の古き厨や初鰹4愛知県佐藤マルキチ
88東風乗せて柳川堀を返り船4神奈川県遠野アルヒ
90葉桜の雨しづかなり匂うなり4滋賀県百合乃
95ぬつと来てすうつと包む春の闇4静岡県彗 星
97半熟のオムレツとろりおぼろ月4埼玉県桜 子
108明日できることは今日せず春の雨4埼玉県夜 舟
109あをぞらにモザイクめくや若楓4神奈川県藤澤迪夫(みちを)
115新人の声かわりゆく四月尽4神奈川県毬 栗
128仲違い詫び言えぬまま花は葉に4滋賀県鶴亀鈍
135鉛筆をくにやくにや揺らす暮春かな4東京都浩 平
176その中に縁切りの絵馬桜散る4兵庫県毬 藻
191止め石としての父あり昭和の日4三重県déraciné
203割り切れぬ余りも答花筏4岡山県原 洋一
167この畦に母の摘みゐし野蒜かな3神奈川県ひろし
209背凭れに掛くる上衣や春の昼3東京都浩 平
82椿落つ微笑むごとく水揺るる3神奈川県みぃすてぃ
94暁を反し細魚の一夜干し3石川県翡翠工房
101別れ霜葱抜く指に水残る3東京都水谷博吉
104君たちは頑張ってるよ葱坊主3京都府せいち
129散る花の影に重ねし齢かな3岡山県原 洋一
151独り立ち列車待つ間の飛花落花3大阪府森 佳月
155雨の香の田んぼ見回りつばくらめ3宮崎県黒木寛史
161蛇出でて「g」の字の如こちら見る3岐阜県近藤周三
174亀鳴くや自爆しそうなこの地球3東京都小石日和
188ローカル線走る車窓へ花菜風3千葉県光雲2
198朝凪や宿の下駄はき浜の市3神奈川県阿部文彦
75風光る連れ添ひし日々遥かなり2千葉県えだまめ
92吐息めく胴吹き桜をちこちに2広島県山野啓子
107朧夜の樹々は吐息をもらしけり2愛知県み う
134紫を訪ねてみれば山の藤2奈良県魚楽子
138天道虫異国のにほひ連れてくる2大阪府奥村かよん
141すれ違ふひと皆きれい花万朶2大分県晴田そわか
144老桜の七百年を咲きほこる2静岡県渡邉春生
145東雲の谷戸の渡りや百千鳥2神奈川県秋山由美子
157熱すぎて飲めぬ茶を淹れ新社員2静岡県指田悠志
163春光のとけいる水や上高地2兵庫県三 郎
164牡丹咲く崩るるさまに憂いあり2滋賀県百合乃
166公園を独り占めする花見かな2広島県山野啓子
175囀りや路地に朝餉の湯気あがる2東京都水谷博吉
178靴を替へ眼鏡を替へて更衣2京都府せいち
181移住者はシングルマザー花辛夷2愛知県み う
182錆びついたぶらんこ小さき靴の跡2埼玉県夜 舟
183吊床にかすかなりゆく葉騒かな2神奈川県藤澤迪夫(みちを)
186長閑さや音の狂ひし駅ピアノ2神奈川県風 神
201背伸びして整列したり葱坊主2茨城県西川富美子
207老ひ確か十三回忌の桜しべ2埼玉県千葉 美知子
211笛の音のやうな園児の磯あそび2大阪府椋本望生
213下駄音や温泉郷の宵桜2広島県一 九
77花冷えや朽ちたベンチは座れない1大阪府森 佳月
78蛞蝓の道をなしたる登窯1大分県牧野桂一
80刈りのこす畝2メートル雲雀の巣1新潟県しーしー
81青春歌ながれしラジヲ春夕焼1宮崎県黒木寛史
85蒲公英を踏みて登れば鳥の声1大阪府順 紀
96さへづりや樹海に光り射し込めり1静岡県えいちゃん
99山桜「国宝」級の人出かな1愛知県コタロー
105世の中の幸せ運ぶ花いかだ1神奈川県ゆりみ
110クッキーの欠片零れし春愁ひ1神奈川県ドラゴン
112春昼や花の絵競ふ格天井1神奈川県風 神
133帰国待つチャイルドシート夏隣り1埼玉県千葉 美知子
140春風と空中戦の竹とんぼ1神奈川県梗 舟
147楠若葉九十越ゆ長寿会1鹿児島県青 猫
152ガムランの二階に響く春の昼1大分県牧野桂一
160弁当を木影に纏め苗植うる1神奈川県たかほ
165入学の子の制服や袖長し1埼玉県イレーネ
169奥宮は森の中なり百千鳥1静岡県彗 星
170平家琵琶のばち音響く春の宵1静岡県えいちゃん
177日のかげら連れてはじまる飛花落花1愛媛県海 猫
195葉桜や参道跡の小さき碑1兵庫県ケイト
199身を託し舞い上がろうか春疾風1北海道篤 道
202風光る鬣なびく草千里1滋賀県鶴亀鈍
208人去りて木香薔薇が家主に1奈良県魚楽子
210わんさかと双葉競ふや夏近し1千葉県文 武
212藤の花風が舐めゆく逢魔時1大阪府奥村かよん
217噴煙や菜の花明り続く土手1神奈川県りゅう
221聖五月白き教会立つ岬1鹿児島県青 猫
222藤棚を揺する風さえ濃紫1静岡県なな子
草の花ネット句会4月句会 選評 選者:草の花俳句会 同人会 服部 満

≪兼題の部:長閑≫

★のどけしや赤子指より眠りだす

 長い春の日の、のんびりと穏やかな気分が長閑。ここから人の動作やものの働きがゆっくりしているさま、
さらに気持ちののびやかさや平静さにも及びます。赤ん坊の手が温かくなって、眠気を催したところでしょう。
「指より眠りだす」の表現に実感があります。「のどけしや」に母親の穏やかな気持ちも感じられます。

◎長閑さや戸口に護符の角大師

 すべてがゆったりとした春の一日。門口には角大師の魔除けの札が貼られている。正月にお寺でいただいた護
符を張ってから、既に春も深まっています。高僧元三大師が疫病退散のために降魔の像で描かれる角大師の護符
ですが、「長閑さ」の季語で、穏やかな春の昼が眼に浮かびます。元三大師の法力でしょう。

◎のどけしや岬が空へ浮くやうな

 景色ののどかさのみならず、これを眺める作者の気持ちも平静なのでしょう。内海の対岸の岬が、春霞のなか
岬の裾もぼやけて、静かな春の海上に浮かび上がっているように見える。景色のこの大きな把握が良いですね。
作者の駘蕩たる心が映し出されたものでしょう。ゆったりとした春の海を描いた一枚の絵画を見るようです。

≪自由題の部≫
                        
★この畦に母の摘みゐし野蒜かな

 今年もこの畦に野蒜が芽を出した、亡くなる前の母は毎年この野蒜を摘んでいたなあ、という作者の感慨が伝わ
ってきます。母はよく酢味噌で調理してくれたが、今日は味噌を付けて酒の肴にしよう、そんな作者の気持ちを感
じます。畦の野蒜を前に、現在と過去が交錯し、亡き母への思いに至るようです。


◎奴凧胸をそらして睨みをり

 奴が袖を張った形に作られたのが奴凧。凧糸を繰り出されて風をとらえ、空へ登ろうとする瞬間の景でしょう。
奴が、さあ行くぞというように胸を反らし睨みつける。奴凧の奴の目玉は大きく迫力がある。風をとらえて登って
行く凧は力強く、糸を持つ手にも重量感が伝わります。


◎むらさきの雫したたる藤の雨

 藤棚に降る晩春の静かな雨、藤房を伝わった雨が雫となって滴る。その雫が藤の花を伝わることで、紫色に染ま
っているように見えたというわけです。それを「むらさきの雫したたる」ときっぱり表現したことで、連なる棚に
下がる藤の紫色がいっそう強く印象づけられました。


        
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