10月句会投句一覧
兼題の部(新蕎麦)
1新蕎麦を告げる貼り紙紺のれん2新蕎麦や小京都で店さがしをり
3新蕎麦の真髄それは水回し4幸村の上田の城の走蕎麦
5新蕎麦や馬刺も付いて小諸宿6新蕎麦のもてなし豊後国分寺
7虚子に似てよく笑ふ客走り蕎麦8新蕎麦ヘ蕎麦街道を行くクーペ
9村おこし爺の茹で上ぐ走り蕎麦10新蕎麦や今日も並びの最後尾
11医帰りに新蕎麦を夫と横丁に12新蕎麦や村の移住者歓迎会
13筆太の文字の貼り紙走り蕎麦14新蕎麦や梁や柱の黒光り
15新蕎麦や少女A役早四年16新そばのその香も馳走なり旨し
17走り蕎麦天城街道水奔る18過疎村に新蕎麦の旗ひるがへり
19湯がき汁添へて新蕎麦旅の店20新蕎麦の箸進む母いのち延ぶ
21外からの手打ち風景走り蕎麦22新蕎麦や打ちたてを待つ古民家
23新蕎麦や湧水めぐる城下町24新蕎麦や水車まどかな音放ち
25のれん分け香りくすぐる走り蕎麦26山形に赴任の吾子と走り蕎麦
27新蕎麦や内定式に孫出社28百年の振り子のひびき走り蕎麦
29新蕎麦や茅葺き民家の古暖簾30新蕎麦や夫にツマ添え満ち足りて
31秋蕎麦の香りも湯気の中にあり32新蕎麦や尖り残せし回し水
33新蕎麦や祝ふ二人の五十年34新蕎麦や祝開店日ジャズ流る
35新蕎麦や一番乗りで名店へ36新蕎麦や開墾したる山畑
37サラリーマン並ぶランチや走り蕎麦38新蕎麦を挽く安曇野の水車
39新蕎麦の便り故郷無人駅40新蕎麦の幟探してはしご蕎麦
41新蕎麦へ一番乗りを決行す42新蕎麦や妻とふたりの深大寺
43新蕎麦の実演も又味のうち44新そば来母のくせ字の手紙添へ
45新蕎麦や風雨に耐えし紺暖簾46新蕎麦の打つ間預かる徳利かな
47新蕎麦粉掻けば了へぬ一人酒48新蕎麦のもり三杯をすすりけり
49新蕎麦のふとぶと含む祖父譲り50新蕎麦や共に味はふ家族減り
51新蕎麦や幟は古くパタパタと52香り立つ通をうならす走り蕎麦
53新蕎麦や手添ふ老父に笑む老母54新蕎麦を茹づる間合ひの鬼おろし
55新蕎麦や宇治のせせらぎ古のれん56菊練りの手先鮮やか走り蕎麦
57新蕎麦や古民家梁の黒光り58新蕎麦の香り濃くなる蕎麦湯かな
59新蕎麦や少し遠出をしてみやう60新蕎麦やいつもの席で箸を割り
61打ちあがるまでの談義や走り蕎麦62新蕎麦に生きる望みを託しけり
63新蕎麦や五風十雨の母許に64走り蕎麦豪快に食ぶ信濃人
65新蕎麦や遠路厭わず峠越ゆ66新蕎麦は父亡き後もこの店で
67割って入る暖簾の家紋走り蕎麦68友と行く今日も新蕎麦帰ろかな
69新蕎麦やあの日あの時あの場所で70ポロックの画展逃れて新蕎麦へ
71新蕎麦や郷土に老舗百貨店72新蕎麦やもうすぐ伯父の七回忌
73走り蕎麦季節のうつろいをすすり74永平寺詣での締めや走り蕎麦
75大陸の風新そばの茹で上がる76とっくにと新蕎麦談義マウントし
77新蕎麦を待つ間信濃の地酒酌む78新蕎麦や京のホームの立食ひ店
79新蕎麦や奥多摩巡りの一休み80新蕎麦と聞きて並びし真昼時
81新蕎麦や烏羽色の通夜の皿82草原で新蕎麦食べる夢を見る
自由題の部
83八十路超え穏やかな日々鰯雲84低き雲速く流れて赤蜻蛉
85雪虫や吸気と共に苦きこと86銀杏をペンチで割りぬ音のよし
87コスモスはメトロノームに似て揺れて88飯事のママが押し出す心太
89秋空や馬にもわかる野の広さ90菊くらべ城をバックに刀自二人
91子規庵の朝顔淡き水の色92餓える子の嘆きの声や冬初め
93角に消ゆまで子見送る月夜かな94秋澄むや老いのねがひは自宅の死
95家計簿の三行日記秋灯下96文化の日怪しき文語など使ひ
97爽やかや茶房の席は富士仰ぐ98露更くる一人住まいの黙深く
99せかされて色づく柿のたわわなり100やはらかき風のひとゆれ実むらさき
101名月や新築建ちて見えずらし102家を去る棺へ香り金木犀
103星月夜もうすぐ母の七回忌104淀川の風に運ばる菊人形
105手の平にさいの目切りの新豆腐106波いつも一期一会よ雁渡し
107朝顔の紺に著けきたたみ皺108竹さやぐ庭にかばかり彼岸花
109木犀の香り湧き立つ夜勤明け110新蕎麦や武具飾りある奥座敷
111一人来て風となりゆく花野かな112くずの葉は覆い尽くして困りもの
113径の草露に立濡れ塚の脇114開け放つ青き鎧戸小鳥来る
115曲がり尾の猫の戻りてゐのこづち116托鉢僧坐するひととき紅葉窓
117AIに虚実不明やうそ寒し118庭下駄の素足冷たき今朝の秋
119宣誓の二つの右手秋高し120吹く風に芒ひかりを靡かせて
121荒走り塩一摘み添えてあり122味噌汁を覗き込みたり鰯雲
123海へつく聖地の鐘や秋夕焼124初冬や久方ぶりの赤暖簾
125母と子のじゃんけん遊び秋うらら126秋祭すみ又もとの過疎の村
127塩とんぼ行きつ戻りつ塩とんぼ128甦る古き記憶や蔦かずら
129夜鳴き蕎麦同心はてと箸を止め130肌寒や枕に残る児の温み
131断崖のヤッホー木霊秋の名残132先着の列の中ほど鮭売り場
133枯萱や風の抜けゆく朝の道134セラヴィとふ言葉身に沁む秋の暮
135拝むとて止まらぬ時や雁渡る136一管の鋭し揚幕に宵の秋
137幾千年治乱興亡秋の月138熱気球色無き風に躍らされ
139派手好みひとり呟く衣更140秋めいて湯のみ茶碗を取り落とす
141昼の虫ささやくやうに鳴きにけり142名月と聞きて出でしが店の中
143秋日和書店のポップをちょと揺らす144病室のそぞろに寒き電子音
145歩みては往けぬ黄泉路や後の月146鳥の影なく穭穂の穂の揺るる
147帰り花虫も飛ばぬに蘂開く148幼子の冬陽に翳す金平糖
149だんまりを決め込む夫や柘榴の実150芒の穂揺れて落日惜しむかに
151名月や佐渡金山を照らしけり152途中まで言いかけたけど木の葉散り
153秋時雨遠くに響くホルンの音154秋雲を抜けて去りゆくプロペラ機
155黄泉の入り口彼岸花の赤燃え156無月かな二階の宴の整ヘリ
157蔓草の先より冬の降りてくる158スーパーの値札見直す秋時雨
159露時雨街道沿ひの六地蔵160ふくよかな陽を浴びてをりかりんの実
161逞しく生きる根性泡立ち草162玻璃戸越し妻と眺むる月今宵
163古地図を繙くほとり龍田姫164鉄塔や帰燕の空に二言無し
165鳥渡る故里にても見たやうに166淋しげな季語に目が行く秋の暮
167アニサキス秋刀魚臓物済み何処168コンバイン音高らかや天高し
169藤袴無冠の夫に供えたり170流木の動かぬ河口去ぬ燕
171凩や句友の見たる三島の死172干柿の列なす壁を風抜ける
173てにをはを持て余したり二十日月174竿売りの声通り過ぐ片時雨
175ライブハウス千切音戸を漏れ秋176こころの荷ひとつ吹つ切り障子貼る
177若冲のにわとりの絵や曼珠沙華178秋ともしどの灯も人を待つやうに
179馬肥ゆる豚カツソースたっぷりと180遠近にあがる火の手も曼珠沙華
181雨滴受け色満ちゆけり実むらさき182ピチピチ水撥ね返す秋なすび
183新米や今朝仏飯の湯気香る184野良着ままテープ切る奴運動会
185雨粒を零さじと抱く草の花186往きし日の父母の来訪菊人形
187長き夜や不協和音のフリージャズ188吾亦紅リゾット香るカフェの席
189野ぶだうや六角形の観音堂190おもしろき山また山や蕎麦の花
191スーパーの椎茸売り場湿りをり192品書きの墨あざやかや走り蕎麦
193口笛のまつすぐ伸びてゆく刈田194ねこじゃらし夏疲れなし一面に
195ほのぼのと柿は鈴なり広き庭196コスモスの揺らぎ故郷の日の揺らぎ
197なだれ来てなだれ飛び立ち稲雀198秋祭太鼓打つ真似無心の子
199いつまでも見送る母や秋入り日200留守の子が吹くオカリナや秋の暮
201甘干の軒に連なる里の村202蓑虫やこの世のことを垣間見る
203濁り酒茶碗の縁は少し欠け204金木犀風の誘惑路地曲がる
205かりんの実意志あるごとく落ちにけり206小夜時雨橋の袂の小料理屋
207秋雨や鳥鳴く声の山に消ゆ208テイクオフ無月つきぬけ名月や
209山萩や袂の濡るる乱れ咲き210裏山に紅葉かつ散る静寂かな
211秋晴れや思ひの丈舞へ女宰相212残菊を括りて終へる我が花壇
213待ち詫し故山にまこと薄紅葉214拾ひ来し三つの栗は椀種に
215烏鳴く丹沢山塊初時雨216待つ人も無き故郷や百舌鳥(もず)猛り
217濡れそぼる蕾数ふる里の秋218秋の田を次男と巡り茣蓙の飯
219ベルサイユ栄枯盛衰薔薇の花220爽やかやポニーテールの踊る
221紅葉かつ散るビル風の吹き抜ける222うまさうにお隣の柿色づけり
223明日へと繋ぐ点滴風は秋224暮れ早し老いて働く世の流れ
225横尾忠則のY字路に立つ星月夜226二回目の窄頭術や柿紅葉
227七輪の埃は昭和さんま焼く228箪笥より羽織持ち出す夜寒かな
229林檎持て「初恋の日」の細道に230鶏頭に情熱といふ花言葉
231フィナーレの怒涛は黙へ後の月232羽重き老鷹もはや抗はず
233被写体をブナの実と知る秋の声234柿剥きの長さ比べに負けてやり
235彗星を見上る頬や金木犀236桐の実や自転車を押す女の子
237涼やかやふうせんかずらゆらゆらら238秋夕焼に溺るるやうに川下り
239野葡萄は天上の色けもの道240値段見て新米戻す子沢山
241敷きつむる銀杏黄葉の切通242秋の宵ジャズに重なり雨ひそか
243秋夕焼へ向かって強くこぐペタル244わが肩に桜紅葉や散り急ぎ
245しののめの星ふる忌明け鶴来たる246やや寒の新色のペンおろしけり
〔選句方法〕

下の〔草ネット投句〕ボタンから送信するようにお願い致します。
「選句」を選び、兼題より2句、自由題より4句の計6句を選択し、
都道府県名・氏名(俳号可)を明記の上、「送信する」ボタンを
押してください。

選句〆切:11月22日(土)、発表は11月25日(火)に行います。

なお、一部の漢字はネット上では正しく表記されず、
「?」で示されますので、読みを入れてあります。
        
9月句会結果発表
兼題の部(秋の水)
作 品 互選 選者選 都道府県 作者
4水の秋逆さに映る馬のかほ9静岡県指田悠志
80墓洗う薄き背中や秋の水9鹿児島県青 猫
64コックスの声高らかや水の秋8神奈川県毬 栗
55奥多摩の木霊をのせて秋の水7東京都小石日和
13湧き出して砂を踊らせ秋の水7京都府せいち
30水の秋水の底なる水の影6岡山県原 洋一
1泡ひとつくるくる回り秋の水5大阪府森 佳月
3湖に落ち群青となる秋の水5神奈川県遠野アルヒ
14手水舎の龍の口より秋の水5茨城県申 女
21シャキシャキと米研ぐ音や秋の水5滋賀県幸 亀
43奥琵琶の秘仏を訪へり水の秋5愛知県牧 子
58川石に魚影一瞬秋の水5岩手県素 風
12秋水をたたへて清し五十鈴川4愛媛県海 猫
22ゴールドで返す免許や秋の水4広島県山野啓子
29今日からは子の水筒へ秋の水4神奈川県たかほ
66立ち枯れの木々の瞑想秋の水4愛知県み う
88秋の水菩薩の多情映しをり4大阪府おくむらかよん
32ホスピスにミントの薫り水の秋3静岡県彗 星
10木曾の杣生傷洗ふ秋の水3岐阜県近藤周三
39スケッチを見せ合ふ子らや水の秋3神奈川県ドラゴン
48合流に行き交ふ風や秋の水3神奈川県横坂 泰
50水の秋竿を漕ぎだす渡しかな3神奈川県風 神
60はがれたる大樹の木肌秋の水3兵庫県毬 藻
83つくばいに犇く星と秋の水3大分県晴田そわか
20小魚の生命の群れる秋の水2愛知県コタロー
45小流れにわたる棚橋水の秋2栃木県垣内孝雄
7川底の藻草と遊ぶ秋の水2神奈川県阿部文彦
11富士山を写す本栖湖秋の水2京都府花 子
15きらめける光の刃秋の水2神奈川県みぃすてぃ
28白秋の詩集にルビよ水の秋2神奈川県ひろし
31どこまでも正直であれ秋の水2滋賀県鶴亀鈍
33日のひかり静かに揺るる水の秋2静岡県えいちゃん
37豪雨にも澄まんとするや秋の水2奈良県よっこ
38木道に接写する人水の秋2千葉県こごめ草
53高麗川の二手に分かれ秋の水2千葉県須藤カズ子
59旧友の旅の誘いや秋の水2千葉県文 武
68鯉の口艶めくほどや秋の水2千葉県蘆 空
77船頭の唄声流れ秋の水2静岡県渡邉春生
85銘刀の秘技焼入るる秋の水2神奈川県りゅう
2手に受けて指に爽やか秋の水1千葉県えだまめ
16一列車止る鉄橋水の秋1東京都吉田いつし
17棚田から湖へ湖へと水の秋1滋賀県百合乃
18利尻富士仰ぐ足下秋の水1宮崎県黒木寛史
23深吉野の水分社より秋の水1大阪府藤井あつこ
35秋水を切り行くエイト速み秘め1兵庫県瞳 人
36わさび田に滴り落ちる秋の水1千葉県山 月
40祖母眠りくちびる湿す秋の水1東京都水谷博吉
47そろそろと両手にうけて秋の水1千葉県あけび
54風渡る大屋根散歩水の秋1大阪府日野かぐや
63海馬へと酸素運びし秋の水1秋田県不知飛鳥
65秋の水水鳥一羽影揺らす1大阪府辻本四季鳥
72神域や龍の口から秋の水1北海道篤 道
73爪立てて亀が歩くよ秋の水1神奈川県とん子
76父と娘の網もて掬ふ秋の水1東京都浩 平
84秋水や風呂湯を一度上げる宵1広島県一 九
86父の住むホームの池の秋の水1神奈川県佐藤けい
自由題の部
作 品 互選 選者選 都道府県 作者
137コスモスを風あるように活けにけり15千葉県光雲2
160古里の「村史」繙く夜長かな10北海道篤 道
118来し方を語る二人の良夜かな8岡山県原 洋一
161丹念に備蓄米研ぐ震災忌8神奈川県とん子
107歯切れよく台詞を語る村芝居7埼玉県桜 子
114キッチンに育つハーブや小鳥来る7石川県翡翠工房
215人形の青い目にある秋思かな7神奈川県ドラゴン
103音も無く橋を渡るや月の影6神奈川県みぃすてぃ
104村境越えて一望蕎麦の花6東京都吉田いつし
150水瓶に潜んでいたり月の影6三重県déraciné
237同胞のそれぞれの老い草の花5愛媛県牛太郎
176秋うららタトゥーの歩く東大寺5大阪府おくむらかよん
184虫の音や乱歩に挟む栞紐5神奈川県みちを
200屏風絵に赤を沈めて烏瓜5兵庫県峰 乱里
208やんはりと断る誘ひ秋扇5静岡県彗 星
226秋風や香りを乗せし鉋屑5神奈川県風 神
110香の物欠かさぬ膳や秋の暮4広島県山野啓子
102古傷には触れず酒宴の夜長かな4茨城県申 女
124酔芙蓉今日も午後から一人酒4千葉県山 月
135山寺の坂を傾ぐや秋日傘4千葉県あけび
141子の手孫の手総動員の吊し柿4千葉県須藤カズ子
147吾が余生余りにあらず実山椒4千葉県文 武
149高原の風一面の秋桜4愛媛県牛太郎
170石人のどれも首無し曼珠沙華4大分県牧野桂一
173群雀日がな竹伐る音の中4神奈川県りゅう
198仏飯の湯気立ち昇る今年米4広島県山野啓子
225落蝉や脚仰向けで風を漕ぐ4千葉県光雲2
234油蝉鳴いて大樹を焦がしけり4岩手県素 風
243横顔の子規の写真や秋思濃き4岐阜県俳ネン
249ふるさとへ越してゆく友吾亦紅4神奈川県とん子
101尺八の市歌の合奏秋深む3京都府せいち
177使われぬバランスボール秋暑し3大阪府森 佳月
219路地裏にもるる読経や秋簾3愛知県牧 子
257黒よりも深き色して葡萄成る3兵庫県ケイト
920といふ放下の数字秋のこゑ3静岡県指田悠志
96果樹園の切り株あらた群芒3神奈川県みちを
98能登の子を養子に尼やとろろ汁3岐阜県近藤周三
116こぞりては祈りのかたち曼殊沙華3神奈川県ひろし
120秋扇内緒話の口に添へ3静岡県彗 星
122盂蘭盆会秒針はまだ脈を打つ3神奈川県ゆりみ
127我が犬の顔舐めにくる敬老日3神奈川県ドラゴン
128赤とんぼ乗せて川風ゆきにけり3東京都水谷博吉
157夜食とる耳に赤ペン待機させ3大阪府椋本望生
167家族みなそれぞれの秋灯しけり3栃木県北原八重子
171かりがねの軍港包みこむ落暉3大分県晴田そわか
175切岸へつづく細道芒原3神奈川県秋山由美子
191揺るる月隅田を下る通ひ船3神奈川県みぃすてぃ
192蚯蚓鳴き闇の深まる深大寺3東京都吉田いつし
195一点を見つめる案山子目はのの字3埼玉県桜 子
197無住寺の朽ちたる屋根や昼の虫3滋賀県幸 亀
202紬織る筬の調べや萩の花3石川県翡翠工房
236冷やかや琥珀に透ける虫の翅3兵庫県毬 藻
90過ぎし日は幻のごと夜涼かな2千葉県えだまめ
91黍嵐座して聴き入るラジオ劇2神奈川県遠野アルヒ
105秋桜メトロノームに似て揺れて2滋賀県百合乃
106蜩やまだ畠にいる農の人2宮崎県黒木寛史
109狗尾草風と自在に遊びけり2滋賀県幸 亀
112山頂に待ち伏せゐたる深き霧2兵庫県峰 乱里
123色と香とほめて新蕎麦すゝり込み2兵庫県瞳 人
131朝露の天地転がし落ちにけり2愛知県牧 子
148人送る夜の明るさ萩の道2兵庫県毬 藻
155キャッチボール見えるまで子と秋の暮2岐阜県俳ネン
163月例句会中断の青蜜柑2奈良県魚楽子
164組立ての進む足場や秋の雲2東京都浩 平
169町内は五時の知らせや赤蜻蛉2兵庫県ケイト
174秋桜や暮れ行く空を彩りて2神奈川県佐藤けい
186牛を譲り夫婦村捨つ秋の風2岐阜県近藤周三
190客席へファールボールと赤蜻蛉2茨城県申 女
194入相の山寺の鐘鰯雲2宮崎県黒木寛史
210もう聞けぬ隣の寝息門火焚く2神奈川県ゆりみ
221日差しさす空き家の庭に柘榴かな2栃木県垣内孝雄
229頑なに南瓜嫌ひし戦中派2千葉県須藤カズ子
244大利根の渡しわたれば曼殊沙華2千葉県蘆 空
245点滴の続きし看取り居待月2大阪府椋本望生
247裏木戸でシャンとお迎え彼岸花2茨城県西川富美子
251雲の龍泳がしている秋の空2奈良県魚楽子
259思ひ出はみな濁りなし新酒の夜2大分県晴田そわか
260秋場所の柝の音高き初日かな2広島県一 九
89夫婦ともに淋しがり屋や秋ともし1大阪府森 佳月
93風呂に火を入れて夜庭をもう一斗1新潟県しーしー
94萩の花道も水路もワイ字かな1愛知県のそう
95佇むめば三浦海岸秋の雲1神奈川県阿部文彦
100白々と山湖さざ波今日白露1愛媛県海 猫
108秋暑し干上がる池に鷺一羽1愛知県コタロー
111天気図に渦の二つや台風来1大阪府藤井あつこ
113自棄酒の理由は言はず初時雨1神奈川県ひろ志
119収穫の秋語る背や父老ひし1滋賀県鶴亀鈍
121ピカピカと光るディスクや鳥威1静岡県えいちゃん
126新蕎麦や写真の父の片えくぼ1千葉県こごめ草
136朝市に男まざれり秋茄子1神奈川県横坂 泰
140ベランダにおきざりゴム草履ちぢむ1埼玉県豊 楽
143秋水に棹さす若衆三代目1東京都小石日和
144地芝居の聞こへし台詞津軽弁1埼玉県イレーネ
146秋の火や仕舞稽古の大き影1岩手県素 風
152秋の夜訛りのまじる長電話1神奈川県毬 栗
154名月や小石ころがす波の音1愛知県み う
156超人の脚跳ねあがり月を指す1千葉県蘆 空
159最上川舟運の跡萩の花1茨城県西川富美子
165小鳥来る夜明けの森のにぎやかに1静岡県渡邉春生
185憚りて乳房我が子へ秋の暮1大分県照 久
187朝霧の晴れて湖畔の黄菅かな1京都府花 子
193案山子二基駆落ちするのその姿1滋賀県百合乃
199石垣のしるき山城葛かをる1大阪府藤井あつこ
211菊正をもう半分…志ん生忌1兵庫県瞳 人
212父百で全う人生白露かな1千葉県山 月
214ビルの間に行き交う人や穴まどい1千葉県こごめ草
217錦木の晴れ着まといし鎮守様1神奈川県きゅりお
220ぎんなんや踏まれ実を吐く匂い撒く1滋賀県原茂幸
230墓参「天保」刻字の彫深し1大阪府日野かぐや
238夫と子とビンドウ仕掛け秋の水1三重県déraciné
240袖無しも臍出しも居り秋高し1神奈川県毬 栗
241秋木立森の奥よりチェ―ンソウ1大阪府辻本四季鳥
242鈴虫や皇子の草庵跡とあり1愛知県み う
248満月やスキップする児の身の軽さ1北海道篤 道
250珍客のこおろぎ宵のバスルーム1埼玉県千葉 美知子
252秋涼しマーブルチョコを振ればなほ1東京都浩 平
253菊人形声をかければうなづきぬ1静岡県渡邉春生
255稲刈りや学習田のはしゃぎ声1栃木県北原八重子
258花芒地割れあらはに放棄の田1大分県牧野桂一
261雲高く置き黄金の稲架の列1神奈川県りゅう
263秋の昼白帆過ぎ行く逗子の海1神奈川県秋山由美子
264真夜の杜秋風鈴の幽かなり1大阪府おくむらかよん
【選 評】 選者:草の花俳句会 同人会 服部 満

≪兼題の部:秋の水≫

★コックスの声高らかや水の秋

 川や競漕場でのボートの練習風景でしょう。「声高らかや」と強く切ったことで、舵手の掛け声がいっそう
大きく響きます。漕ぎ手への指示なども飛んでいるかもしれない。オールがとらえる水音に加えて、舵手の声
が高らかに冷たく澄んだ秋水に反響してゆく。「水の秋」とおさめて、景がぐっと広がった。ボートの進む彼
方の空まで目に浮かびます。

◎水の秋水の底なる水の影

「水の」を連ねてリズミカルな調子を得ました。よく晴れて日の差し込む川底を見ていると、目撃する景です。
水の流れる水中の模様が川底に影となって揺らめく。水が清らかさを増してひんやりした秋ならではの景です。
「水の秋」で、水中だけでなく川の周囲の景色まで見えてきます。

◎奥多摩の木霊をのせて秋の水

 奥多摩は東京都の西端、山や渓谷に囲まれた景勝地。奥多摩湖や御岳渓谷の秋の水でしょうか。やまびこが
周囲の山や湖面に反響して聞こえる。澄んだ冷たい水の流れと周りの深い木立を見て、作者は樹木の精霊まで
もが秋水にのってあたりに浮かれ出たと感じたのかもしれません。

≪自由題の部≫

★歯切れよく台詞を語る村芝居

 秋祭りに催された地元の人たちの素人芝居でしょう。明治時代まで盛んに行われましたが、今もその伝統を
受け継いでいるところもあるようです。冗語とも思える「台詞を語る」をわざわざ加えたことで、役者が一生
懸命稽古をした成果を披露しようとしている熱意が分かります。また、見物客も地元の仲間の熱演を楽しんで
いる様子がうかがえます。

◎尺八の市歌の合奏秋深む

 市民文化祭などの一齣です。こんな舞台での市歌の合唱などは珍しくありませんが、尺八の合奏がユニーク。
尺八も別ジャンルとのセッションも見られる時代ですから、尺八同好の士による市民への披露なのでしょう。
普段耳にする市歌と趣の違う楽器の哀愁を帯びた演奏にしみじみ秋の深まりを感じたことでしょう。

◎香の物欠かさぬ膳や秋の暮

 早々に辺りが暗くなる秋の夕べ。夕餉の食卓には必ず漬物を用意する。きっと自家製の大根の浅漬けか茄子
か胡瓜か。季節の野菜を漬物にする、こんな質素で端正な生活は美しい。夕暮れとともに少しひんやりした空
気を感じさせる「秋の暮」が作者の静かな居住まいと堅実な日常生活を連想させます。

        
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